1995年にフジテレビ系列の『世界名作劇場』シリーズの第21作目として放送された日本アニメーション制作のテレビアニメ「ロミオの青い空」が放送終了から26年経って待望のミュージカル化。
2022年3月30日(水)~4月3日(日)に上演された、ミュージカル「ロミオの青い空」のBlu-ray発売を記念した特別座談会を公開。テレビアニメのロミオ役・折笠愛さんと、ミュージカルのロミオ役・大薮丘さん、アルフレド役・新里宏太さんの3人で、ミュージカル「ロミオの青い空」について語ります。
ミュージカル化についての想いに始まり、舞台を見た折笠さんの感想、大薮さん・新里さんの稽古や公演でのエピソードなど、当時のアニメについても振り返りつつ舞台の裏側トークも交えた、貴重なお話が満載の座談会です!
座談会の模様が、ミュージカル「ロミオの青い空」公式YouTubeチャンネルにて公開中!後編では、折笠さん、大薮さん、新里さんのトリオによる「英雄のマーチ」の披露も!
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Movieページからもご覧いただけます。
今回、その対談の模様を記事として公開!
10月28日に発売するBDを見る前に、ぜひ改めてミュージカルの見どころをチェックよろしくお願いします!
「ロミオの青い空」はファンがとても多い作品で、10周年や20周年のお祝いをしてくださっていたんですね。私もそのお祝いには顔を出させていただいたりしましたし、代表作のひとつとして大切にしていました。本当に長い年月が経っているんですけど、あまり空白を感じない作品ですね。お2人はどうですか? リアルタイムでは見ていない?
お話をいただいたときはあまり作品のことを知らない状態でした。自分の生まれた年にやっていた“世界の名作劇場”のイメージしかなかったので、以前もどこかのインタビューで言ったんですけど、プレッシャーしかなかったですね。
プレッシャーっていうのはどういうこと?「この役を演じるんだ」ってことに対して?
それもあるし、作品を通して名作にふれるっていうところですね。
こういう作品をやったことがなかったし、ふれて来なかったので。
私は「小公子セディ」という作品がほぼデビュー作なんですけど、それに続いて“世界の名作劇場”で主役を演じることになったのが「ロミオの青い空」でした。アルフレド役は早々に決まっていたらしいんですけど、オーディションを受けた子たちのなかにイメージが合う人がいなくて、なかなか主人公のロミオ役が決まらなくて。当時のマネージャーだったたてかべ和也さんが、たまたま私がスタジオにいたので寄っていこうという話になり、プロデューサーも「じゃあ愛ちゃんもやっていきなよ」って。
すごくラッキーだったのと、とてもめぐり合わせが強い作品です。
僕もミュージカルに参加できたのはありがたい話です、本当に。でも最初は自分ができるか不安でしたね。折笠さんに質問なんですけど、アニメを見たときに結構つらかったんです。心をえぐられるというか。子供がつらい目に遭ってるから、なかなか気持ちがリンクできなかったんですよね。
そうなんです。そのひどさに稽古でも演じているときに精神的にきちゃって、しんどい時期がありました。死んじゃうから、この方(新里)が!
そう! 私も同じロミオを演じた大薮さんにそこを聞いてみたかった。
僕も当時はどうだったのか聞きたくて!後半にかけて一気にストーリーが進むじゃないですか。冒頭でロミオのお父さんの目が見えなくなったあたりで、もうつらくてボロ泣きしてました。演じていたときはどうでした?
アフレコって、“テスト”“ラストテスト”“本番”の流れが主流なんですね。テストで入り込んじゃうと、涙も出て来るし鼻声にもなるじゃないですか。だけどその前のシーンに涙は関係ないから、その辺のさじ加減が難しかったです。でも止められないんですよね。
彼はそういうシーンがくると泣いて、「ダメだ、稽古できない!」って言い出したりしてましたね。「稽古はしよう!?」ってなだめましたけど。でも感情があふれちゃって、関係ないシーンのスタートから泣いちゃってたこともありました。
わかる!あのシチュエーションは本当に泣けますよね。
なんか今すごくアルフレドの気分です。ロミオ2人の話を聞いてたら、「うん、そうだね」って(笑)。
本当にカッコ良かったです!私も舞台を拝見したんですけど、正直2.5次元舞台ということで、どうなるのかなって思ってました。私にとって大切な作品ですし、ましてや33話分のストーリーをどのようにやるのだろうと。でも、そんな心配はあっという間に吹き飛びました。大藪さんのロミオをはじめ、舞台上では演者たちがお客様を巻き込んでアニメとは違う臨場感で生き生きと息づいていました。
私なんてストーリーも全部わかっていて、自分がやっていた役なのに、嗚咽しそうになりましたね。恥ずかしいのでこらえてましたけど。
私からも質問していいですか?あのステージのなかで、2人がしんどかった、一番大変だったシーンは?やっぱり泣くシーンですか?
アルフレドが亡くなるシーンは精神的には大変でしたけど、肉体的にシンプルに大変だったのは煙突に登るところです。
そう。てっぺんまで登って、最初にイタリアの空を見たときの瞬間。
素敵なんですけど、正直「めちゃくちゃ登るな!?」と思いながら出てました。しかもさわやかな表情をしなきゃいけないんで、それがしんどかったです。
曲中だから、ここまでには登り切らなきゃいけないのがあったよね。
僕はどこのシーンとかではなく、黒い兄弟の見せかた。舞台ではなかなか兄弟とのシーンがなくて、いきなり兄弟が合流して物語が進んでるんですよね。だから稽古中に役者同士で話し合いました。でも、どうしても稽古序盤はシーンに厚みが出てこなくて……。
そこを稽古期間から本番含め、楽屋でも話し合いながら深め合ってました。僕は後半にいくにつれて、黒い兄弟とは別行動になるんですけど……。
33話分を一気に3時間40分で見せるってことだったので、今宏太が言ったようにどうしてもそのあたりの問題が出てきますよね。厚みを出すためにはどうしたらいいのか、たくさん話し合いました。アルフレドが死ぬシーンも本当に大切にしていきたかったので、ここもものすごく話し合いましたね。
アルフレドが亡くなって以降のシーンは、丘のロミオが引っ張っていくんですよね。ダンテとのやり取りなんかは特に頑張っていた印象があります。
初めてお会いして話してますけど、きっとアルフレドみたいにまとめ役なのかなって思ってました。
しっかりまとめてくれるところもあるんですけど、ものすごくふざけてるところもある。
稽古中、ひとつだけ宏太に辞めて欲しいなってところがあったんですよ。この人ミルクティーをよく飲むんですね。そのミルクティーが8割くらい残った状態で必ずこぼすんです。
必ず!それで床がびちょびちょってことが3回ありましたからね。
飲んでました(笑)。フタの上の方を持つクセがありまして……。
なかなか人がいるところでの食事がしづらい時期ですけど、糖分が欲しくなるじゃないですか。だから稽古が始まる前に買って、ミルクティーを飲んで、ちょっと残して稽古に行くんですよ。一息つこうと思って戻ってきて、ミルクティーを持ち上げたときに椅子に引っ掛けてバシャーン、と。僕、3回目にやらかしたときはもう「あーあ!」ってふてくされてました(笑)。
本当のアルフレドはそんなところないのにね。貴公子だから。
終わってからSNSを見たら、観に来てくださった方たちがアルフレドと僕のギャップについていくのに大変そうでした。
そうです。あと、アルフレドで初めて知ってくださった方も、「これが新里宏太か……」って(苦笑)。
でも僕からすると、宏太は普段からおちゃらけてる感じですけど、もっと内面的な部分ではものすごくアルフレドなんですよ。色々なことを考えていて、こうやっていっぱい喋るのも気を遣っているところからきている人なので。
丘は本当そのまんまで、元気いっぱい。結構気を遣う人だけど、基本的にはマイペースです。でもこの作品のときは、やっぱりロミオ役ということもあってか、すごくみんなに意識を向けてた。ひとりになりたい時間もあったと思うんですけど、そこをみんなとのコミュニケーションの時間にしてました。
座長はやっぱりそういうのが大切ですよね。ロミオとアルフレドだと、物語的にもアルフレドのほうがまとめ役になるじゃないですか。私のアフレコのときは、アルフレド役の藤田(淑子)さんが大先輩で、自分は若輩者。一応私が座長なんですけど、みんなを見渡してまとめていたのは藤田さんでした。
2人のお話を聞いて、ちょっと同じところがあったかもって思い出しました。役に引っ張られますよね。
ありますね。ロミオを演じてるときはめちゃくちゃ穏やかな気持ちでしたもん。
今度は僕から折笠さんに質問していいですか? アフレコのときとか、この作品をやるにあたって大変だったことってなんでしょうか?
今まで少年役を演じる時、少年の声を出そうという意識ではなく、上手く説明できないのですが、その役作りから出てくる、音・声で演じています。結果的に実際は喉をしめたりしているのですが、ロミオもいくつか演じてきた少年という意味では、あまり苦労はなかったです。でも最初は元気よく出て来るじゃないですか。そこから売られて、いろんなことが起こり、アルフレドに出会い、ちょっと挫折というか、「僕はどうしてアルフレドのようにできないんだろう」と劣等感を抱いたり。そのあたりから、スタジオに行くと気持ちがなんとなく引きずられていました。
だからアルフレドが亡くなるシーンのときは、すごくぐったりしました。大薮さんも似たような気持ちになっていたんじゃないかな?
舞台って、終わったら「やり切ったー!」って楽屋に戻ってワイワイするんですけど、この作品はやっぱりちょっと違いましたね。
楽屋に戻っても、僕たちはうなだれてる時間がすごくあった。みんなが準備して帰るなか、僕たちは動けなかったですから。
殺陣とかあったじゃない?あれは大変じゃなかったですか?
僕はジョバンニとのシーンくらいですけど、丘はもう。
でも稽古でやってた殺陣があるんですけど、そっちの方がもっと激しくて色々やってて。
そうですね。時間が長すぎるということで、「ここは減らしましょう」とかありました。だから本番の殺陣は結構余裕があったというか、稽古の方が正直だいぶしんどかったです。戦い終わったあとに「おれたちゃ英雄だ~」って歌うシーンもあって、息が上がってるから「歌えないよ!」って(苦笑)。そこは大変でしたね。
これだけは今日、お2人とやりたいなって思っていたので。
ぜひぜひ。
(3人で「英雄のマーチ」をワンフレーズ歌う)
今日の座談会だけの限定ですよ!今日来た甲斐があった!
あの、ひとついいですか?一瞬でロミオになるんですね。今喋ってる折笠さんは女性の声なんですけど、アニメを見てたときにはその片鱗がまったくないというか、男の子の声なんですよね。今一緒に歌った声を聞いたら、「あ、ロミオなんだ」って思いました。それがすごい。
お2人は舞台でロミオとアルフレドを演じてましたけど、もしあの舞台で別の役をやれって言われたら何の役を選びます?
えー!個人的にはロッシ親方をちょっとやってみたいですね。
ロッシ親方になって、ロミオを見ていたいって感じですかね。
今の見ていたいって意見を聞いてシトロンもいいなと思ったけど、ジョバンニですね。
アルフレドはジョバンニから色々な想いを向けられる側だったので。アルフレドからもジョバンニに向けているものはありましたけど、それ以上のものをアルフレドに向けてみたいと思います。
ジョバンニが良かったんだけど、取られちゃった(笑)。
でも私の雰囲気には合わないから、ニキータかな?舞台のニキータもとっても良かったですね。
七木奏音ちゃんが演じていましたけど、本当にニキータそのままというか。折笠さんはどうしてニキータをやってみたいんですか?
ロミオは意外と受け身じゃないですか。ニキータは能動的だから、正反対の役をやってみたいなって。ステージを見て、ニキータとジョバンニはいい役だと改めて思いましたね。
それは本当に思います。あの2人がいてくれないとたぶん作戦も成功しなかったと思いますし。ライバルであり、本当の仲間だったんじゃないかと感じます。
今日はお2人とこんな風にお話できて、とっても幸せです。ありがとうございました。
もし舞台の続編をやることがあったら、場内アナウンスとかに呼んでください(笑)。
いやいやいや!そのときはロミオの席を譲ってくれると思います(笑)。
この作品は舞台の装置や音楽の強みはもちろん、結構ロミオとアルフレドの視点が強く描かれています。それをこれから発売されるBlu-rayでぜひとも見ていただきたいです。そして、家族や友達の分も買っていただけると、色々な方にこの作品が届くと思います!……買ってね?(笑)
今回はこの3人での座談会の場を持てて、本当に幸せです。僕たち舞台に出演したキャストは、声優の皆さんが作り上げて来た数々のキャラクター像を、アニメの「ロミオの青い空」を見ています。アニメではシーンごとにつらなっている形ですが、舞台では僕たちがずっとステージ出ているんですね。どうやってそのあいだの時間を紡いでいこうかと、稽古でたくさん考えました。みんなで色々なものを紡いでできたのが、3時間45分の素敵なこの作品だと思うので、ぜひ映像でもう一度見ていただきたいと思います。
「ロミオの青い空」が長い年月を経て、素敵なミュージカルという形で復活したことに私は小躍りしました。もちろん私もステージを見に行ったんですけど、キャストの皆さんの熱意に包まれてすごく幸せな時間を過ごすことができました。そのステージのBlu-rayですから、ぜひひとりでも多くの方に見ていただきたいなと心から思っています。そして「ロミオの青い空」の世界を、変わらず応援していただけると嬉しいです。